【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
魔鉱石の色を染めて
さっきまでなら、気負うことなく入れただろう室内。
でも、真相に気がついてしまった今となっては、ドアを叩くのにも深呼吸が必要だ。
……でも、オーナーは、私に命を救われた恩を返してくださったのよね?
あまりに大きすぎたお返しに驚いてしまったけれど、今までだって、いつもオーナーに助けてもらってきた。
私は、私のやり方で、お礼をしていけばいい。
ふぅっ、と強く息を吐いて、ドアをノックする。
そして、そっと開けて部屋を覗くと、淡いグリーンの瞳と、金色の瞳が同時にこちらを向いた。
向かい合った二人は、あまりに絵になる。
そういえば、カフェフローラのダリアも、オーナーと騎士団長様は、熱狂的なファンクラブがあるほど人気だと言っていたわ。
二人ともどこか深刻な表情をしているから、なにか大事な話をしていたのだと予想する。
「あの、お邪魔でしたか?」
「リティリア嬢が、邪魔なはずないだろう」
立ち上がった騎士団長様は微笑むと、私のそばに来て、手を取った。
そのまま、当然のようにエスコートされた私は、先ほどまで騎士団長様が座っていた場所に座らされる。
そして、隣に座った騎士団長様。
なぜか、いつもより少し距離が近いような……。