【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
用意されていた紅茶を一口飲んで、オーナーが顔を上げる。
「手に持っているのは、魔鉱石の原石かな?」
私がかごに入れて抱えてきたのは、オーナーの言う通り魔鉱石だ。
ぱっと見ただけなら、ゴツゴツした白い石にしか見えないけれど、割ってみれば分かる。
そもそも、魔鉱石の原石は、当たりを引くのが難しい。
何千個も割って、ようやくまともに使えるサイズの魔鉱石が出るのが一般的だ。
……でも、これは妖精が教えてくれたものだから。
「リティリア、俺は見るのが怖い」
「オーナーも、騎士団長様も見ていて下さい。今から恩返しします!!」
「恩返し、とは?」
かごに入ったトンカチとノミ。
注意深く原石を割れば、中から透明な石がコロリと飛び出した。
……ふふっ、初めから大当たり。
「そのサイズ……」
「予想の上を行きそうだ」
騎士団長様とオーナーの、驚いたようなあきれたような声。
でも、まだまだこれからです。
それから小一時間、私は黙々と原石を割った。
戦果は思った以上。市場に出回る数倍の大きさの魔鉱石も、三個ほど紛れていた。
「どうですか!?」
「……どうですかと言われても」
「恩返しになりますか!?」
少し戸惑ったように見えた騎士団長様は、小さいけれど一番質がいい魔鉱石を手に取った。
……お目が高いです!!