【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 その言葉を私が告げると、騎士団長様は、美しく儚いほど淡いグリーンの瞳を瞬いた。

「……特訓?」
「はい! 騎士団長様の隣に立つための特訓です!!」

 礼儀作法については、母が亡くなるまで厳しくしつけられたし、ギリアム様の婚約者として培った貴族令嬢としての振る舞いも、きっと役に立つ。

 でも、もっと、がんばらなくては!
 騎士団長様のお役に立ちたいもの!

「……そうか、そのネックレスはとても似合うが、その日までに俺の魔力だけを込めた指輪を用意したら、つけてくれるのかな?」
「え?」
「……俺の婚約者として、参加して欲しいから」

 その瞬間、こぼれてしまった涙。
 わかりやすく慌てた、涙でぼやけた騎士団長様。

「こっ、これは、嬉し涙ですから!」

 騎士団長様に、誤解されては大変と、必死で涙を拭っていると、そっと頬に大きな手が触れて、口づけされた。

「……は、知っている、と言えるくらい、自信が持てたらいいのにな」
「騎士団長様」
「リティリアのことだけは、あきらめることも出来ず、自信を持つことも苦手だ」
「そうですか……。でも、私も自信がないんです。だからもっと、自信をもたせて下さい」

 そっと、騎士団長様の胸元を指先で引っ張って、目をつむる。

 落ちてきた優しい口づけは、まるでお互いが好きだと告げる、告白みたいだった。
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