【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
幸せな朝の風景
「…………」
「…………」
沈黙したまま、私たちはベッドの上で向かい合っていた。
ずっと、腕枕してもらっていたのだろうか。手がしびれてしまうのでは……。
「――――あの」
「可愛い寝顔だったな」
「……えっと、その」
混乱しすぎてしまった私は、思わず騎士団長様にクルリと背中を向ける。
実際に私たちは、年齢差があるけれど、こんなにも余裕な態度を取られると、子ども扱いされているように思えてしまう。
私が招いてしまった、この状況だけれど……。
ドクドクと心臓が音を立てている。
騎士団長様は、私のことを後ろからギュッと抱きしめた。
ぴったりくっついた背中に感じるもう一つの鼓動。
「――――うん。そろそろ限界だ。起きようか」
「…………? は、はい」
ベッドから出て行った騎士団長様は、さっと上着を羽織った。
いつも整えられている髪の毛が、少し乱れている。と言うより……。
「寝癖……」
「え? ……ああ、参ったな。案外、寝癖になりやすくて」
「そうなんですね」
少し慌てたように鏡台からブラシを取り出した騎士団長様。
その様子に、余裕を取り戻した私は、手を差し出してブラシを受け取る。
俯いた騎士団長様の髪の毛は、漆黒だ。
艶やかで、思ったよりも柔らかい。
「アーサー様」
「……なんだろうか、リティリア」
「結婚したら、毎日こうして髪の毛を梳かしてあげますね?」
「――――そう。それは、ずいぶん幸せな朝だな」