【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

「あっ、ごめんなさい。何かあった?」
「それはこちらの台詞よ。……ここ三日間、心ここにあらずよね」
「……心配かけて、ごめんね」
「謝ることじゃないわ。……騎士団長様が来ないから?」
「……っ、ダリア」

 認めるしかない。最近、私が仕事中まで上の空になってしまっているのは、間違いなく騎士団長様が来て下さらないからだ。

 そんな私の反応に、ダリアは微笑むと、一枚の細長い紙を差し出した。

「……御前試合?」
「隣国から、姫君がいらっしゃるらしいわ。それを記念して、御前試合が開催されるの」
「明日……」
「手に入れるの大変だったんだから。明日は店休日だから、差し入れを持って行ってきなさい」
「えっ、迷惑では」

 ふふっ、とダリアが笑う。
 金の髪をハーフアップにして、ピンクのワンピースを着こなしたダリアは、今日も可愛らしい。

「毎日来ていたのだもの。向こうも気にしているわ。それに、クマのぬいぐるみのお礼を口実にすればいいの。もし、渡せなくてもいいじゃない。……会いたくないの?」

 ……会いたいです。

 それしか答えがなかった私は、あとでダリアにたくさん新作のお菓子を贈ろうと心に決めて、入手困難らしい貴重なチケットを受け取ったのだった。

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