【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 そう、私の周りから妖精が離れないときには、いつも事件が起こる。
 魔力が大好きな妖精たち。

 手を引かれて、部屋に入った私の額に落ちてくる口づけ。
 オーナーも心配だけれど、騎士団長様は、いつも自分を二の次にして無茶をするから、不安で仕方がない。

「……無事に帰ってくる。シルヴァ殿を連れて」
「約束です」
「ああ、約束しよう。それと、何かあったときには、あの宝石を手にするように」
「それは……」
「……行ってくる」

 それだけ告げて背を向け去って行ってしまった騎士団長様を見送る。

(私の瞳と騎士団長様の瞳の色をした大きな宝石は、美しいけれど……)

 その時、まだ私の周りを飛び回っていた妖精が、私の瞳の色をした宝石に舞い降りる。

「えっ、まだ何も起きていないのに!?」

 そう、私に危険なんて迫っていない。
 けれど、やっぱり妖精は事件を引き寄せるようだ。
 いや、今がきっと危機に違いない。私は慌てて、二つの宝石をそれぞれの手に握りしめる。

 金色の光に包まれる。あまりの眩さつぶってしまっていた目を開けば、私は久しぶりに訪れる赤い屋根の小さな家の前にいた。
< 229 / 334 >

この作品をシェア

pagetop