【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
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翌日。それほど種類豊富ではないワンピースの中で、一番質がいいものに袖を通す。
髪の毛は、前日から巻いているからフワフワだ。
いつもは仕事だから、ひとくくりにしているか三つ編みにしていることが多いけれど、今日は鏡の前でハーフアップにする。
籠の中には、小さな袋に入ったクッキーを詰め込む。
渡せるかは分からないけれど、クマのぬいぐるみのお礼なのだから、と自分に言い聞かせて準備した。
「いってきます」
ベッドでいつも一緒に寝ているクマのぬいぐるみ。
今日も抱きしめれば、くたっとしたなんとも安心できる感触だった。
「わぁ……。いい天気」
外に出ると、すでに上がりかけた太陽がじりじりと地面を照らしていた。
今日は暑くなりそうだ……。
いつもだったら、もうすでにお店で働いている時間。
騎士団長様が、コーヒーを飲みに来ている時間だ。
御前試合が行われるという会場まで駆けていきたくなるこの気持ちが何なのか、私はまだ知らない。
それでも、水色のワンピースの裾をふわりとなびかせて、いつもより高いヒールの靴で少し足早に、私は王都の街並みを会場に向けて歩き出した。