【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
「さ、その宝石をこちらに貸して」
「……」
なぜなのだろう。騎士団長様が、「リティリアの望むように」とつぶやいて魔女様の前で笑った場面を見た気がした。
「……」
「さあ、どうしたの?」
「……この宝石を騎士団長に渡したのは、魔女様ですか?」
「あら、気がついてしまったの? でも、もう対価はいただいているの」
「……騎士団長様が、差し出したのは」
魔女様に宝石を渡そうと、伸ばしかけた腕をそれ以上差し出すことは出来なかった。
私が、魔女様の元で選択を迫られたら、何を選ぶかなんてきっと騎士団長様には、お見通しだったのだろう。
「知ってどうするの?」
「お願いします! 教えて下さい!」
「……素材をお願いしただけよ」
「……」
実際に魔女様が求める対価は、ほとんどの場合物ではないこと、オーナーに聞いたことがある。
素材を頼んだ、その結末に起きるのは。
「……私」
「さあ、早く決めなさい」
そのとき、強い風が吹いた。