【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 弟のため息は、幼い頃から聞き慣れている。
 けれど、いつの間にか大きくなってしまったその手は、私の小さな手を覆い隠してしまうから、時の流れを嫌でも感じざるを得ない。

 ほどなく、雲の切れ間から、強い魔力が吹き込んでくる。
 いつの間にか、弟と繋いでいたはずの手は離れてしまい、私の少々低めの鼻が、何か固いものにぶつかった。

「いたた……」
「――――は?」

 低い声が、あまりに意外なものを見てしまったように、短く発せられた。
 そして、その直後、バサリと温かくて大きな布に包まれる。
 もちろん、頬は固い感触には当たったままだ。

 この香りを、もちろん私は知っている。
 困ったことに、今の私は、騎士団長様のことをきっと目だけでなく、五感の全てで知っていて……。
 ううん、ただ触れるのだけは慣れていない。こんな状況なのに、苦しいほど胸が高鳴ってしまう。

「なぜ、ここに?」
「……騎士団長様こそ、どうして話してくれなかったんですか?」
「……リティリア」
「騎士団長様が、あんなふうに笑って、願いが叶ったって、私は」

 もう一度、グッと引き寄せられて、落ちてきたのは軽い口づけ。
 そのあと、浮遊感を感じた次の瞬間には、私はもう抱き上げられていた。
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