【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
「騎士団長様が、私のために苦しい思いをしたら、喜べるはずなんてありません」
「……それは」
「何もいらないなんて、そこまでのことは言えないけれど……。でも、騎士団長様が私にとって一番大切な人なのは間違いなくて……」
もちろん、オーナーのことも、弟のエルディスのことも大切で、誰かを選ぶなんて私には難しいのかもしれない。覚悟ないと笑われてしまうかもしれない。でも……。
「――――そうか。まあ、リティリアの大切な人たちごと守りたいと思ったのだが……。泣かせてしまうとは」
「騎士団長様の安全を確保してください!」
「はは、確かに自分の安全をまず確保してから行動するというのは、戦場の基本なのに、リティリアに教えられるとはな……」
「っ、それで、何を差し出したんですか?」
「大したものじゃない。魔力の一部を……」
「もっ、ものすごく大切な物じゃないですか!」
驚きのあまり、私の淡い紫の瞳は、まん丸に見開かれてしまったに違いない。
だって、王国でオーナーと並んで最も強いと言われている騎士団長様が、魔力を捧げてしまうなんて。
「まだ、差し出してない……。その前に、リティリアが、この場所に飛び込んできてしまった」
「……だって、私」
ハッキリ言って、戦闘能力なんてこれっぽっちもない私が、この場所に来たからって、何の役にも立たないに違いない。