【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
その時、ひときわ大きな歓声が沸き起こった。
王都では珍しい黒い髪、遠目にも分かるほど澄んだ、淡いグリーンの瞳。
今回の試合で優勝した騎士様は、騎士団長様と試合をする権利を得るらしい。
お隣で盛り上がっていた女性が教えてくれた。
騎士団長様にエスコートされているドレス姿の女性は、焦げ茶色の髪の毛を美しく結い上げ、青い瞳は柔らかく弧を描いている。
……きっと、あの方が隣国の姫君なのね。
正装姿が、あまりにも素敵な騎士団長様。
騎士団長様に守られて凜と立つ姫君。
物語から抜け出てきたようにお似合いの、麗しい二人の姿に、なぜか胸がチクリと痛む。
「別世界の、人なのに……」
毎朝、かわいらしいおとぎ話みたいなお店の中で会っていたから、私は愚かにも勘違いしてしまったのだろう。
私と騎士団長様の本当の距離は、こんなにも遠いのに。
その時、なぜか淡い緑色の瞳と目が合った気がした。
次の瞬間、会場がひときわざわめく。
お店に来ているときと違って、厳しい表情をしていた騎士団長様は、なぜか私から視線をそらさないまま、微笑んだのだった。