【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
寄り道と言いながらも、エルディスの表情はとても真剣だ。
「オーナー……」
そう呟くと、エルディスと繋いだ左手にも、騎士団長様と繋いだ右手にも、ギュッと力が加わったのがわかる。
雲が晴れていく、その隙間に見えるのは、可愛らしく、時に美しい夢のような空間だ。
「カフェフローラ……」
「……厳密に言えば、カフェフローラの元になった場所の景色だろう。時間と空間が歪んでしまっているんだ。その証拠に」
エルディスの焦げ茶色の髪から生えるのは、白いウサギの耳。
燕尾服は、淡い紫色の瞳も相まって、おとぎ話の世界から抜け出してきたみたいだ。
「……カフェフローラで、一緒に働こう?」
「え? 嫌だよ……」
こんな可愛いウサギ耳のスタッフがいたなら、ますますカフェフローラは人気になるに違いない。
そんなことを思いながら、触れた頭には、予想通りいつか着けていたクマ耳のカチューシャがついている。