【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
「まさか……」
振り返るのが少し怖い。でも、ものすごく見たい。
「……あの、見ても良いものでしょうか?」
「うん? どんな姿かわからないから、なんとも言えないな。しかし、あの時の服装か? リティリア嬢は何を着ても似合うが……」
そう、チラリと見えるスカートの布地や、触ったときの頭の上のクマ耳の感触からいって、今の私は騎士団長様にクマのぬいぐるみをもらった、あの日と同じなのだろう。
勢いをつけて、クルリと後ろを振り向く。
「と、トラ!?」
目の前には、トラ耳を着けた騎士団長様がいた。騎士服はそのままに、トラ耳を着けた騎士団長様は、可愛らしく、かつ格好良い。
「もしかして、尻尾もあるのですか?」
「これか……。ん? 不思議なことに触った感じがわかるな」
前回は、騎士団長様と私の姿を子どもにしてしまったオーナーの魔法。今回のこれもオーナーの時空魔法がもたらす影響なのだろうか。
「さ、姉さん。とにかく行くよ」
「まあ、行ってみなければ何もわかるまい」
「え、ええ」
こうして、シリアスな展開にもかかわらず、少々可愛らしくなってしまった私たちは、妖精が創り出す雲の隙間を抜けたのだった。