【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 このぬいぐるみは、もちろん騎士団長様にいただいた大切な宝物だ。

「リティリア……」

 振り返った視線の先には、珍しいことに困惑を隠すことができていない表情に、虎の尻尾を逆立てた騎士団長様と、この空間にあまりにも似合う、眉間にしわを寄せたうさ耳姿のエルディスがいた。

 一瞬だけ、まるでカフェ・フローラで勤務中なのではないかと錯覚してしまう。
 そんなことを思いながら、見下ろした私の目に飛び込むのは、真っ白なエプロンだ。

「え……?」

 白いエプロンが目に入ったとたん、のどかで深い森の風景が、ピンク色で埋め尽くされた空間に様変わりする。ピンクや白、赤い風船のようなハートが浮かぶ空間には、見たこともない色とりどりのガラスの小物が並べられている。

 ……もしかしてここ、オーナーが話してくれた、初恋のテーマの元になった異国の雑貨店なのではないかしら。

 気がつけば、私の服装も、裾が膨らんだ可愛らしい赤やピンクの色合いのワンピースに替わっていた。
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