【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
あいかわらず黙り込んだままの二人の姿を確認しようと振り返ったとたんに、雲の合間に虹が架かる。
状況が掴めずに呆然としているうちに、私の服は水色に変わって、背中には小さな羽根が生えた。
空にかけられたのは、本当の虹に比べて、色合いがはっきりとした小さな虹だ。
その間を、金色の光を振りまきながら、一匹の妖精が飛び回っている。
「雲の中の虹と妖精……」
これは、騎士団長様に初めて名前を呼ばれた思い出のテーマだ。
騎士団長様にそのことを伝えようとしたとたん、私のそばに白い雲が下りてきて、まるで煙に囲まれたように周囲が真っ白に様変わりする。
そして、雲が切れたとたん、そこは真っ暗闇に変わっていた。
めまぐるしく変わり続ける景色と、急な暗闇に恐ろしさを感じて、ギュッとクマのぬいぐるみを抱きしめる。
「リティリア!」
「――アーサー様」
そっと腕を掴まれて引き寄せられる。
クマのぬいぐるみごと抱き寄せられ、温かい腕の中で、一人ではないことにホッと息をつく。
「……大丈夫か? それにしても、シルヴァ殿は魔法を完全に制御できていないようだ。それに、どうやらリティリアを中心に魔法が展開されているように見える」
「えっ」
「……ここも、カフェ・フローラのコンセプトの元になった場所のようだが」