【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
……なんて、都合のいい妄想をしてしまった。
有名人が、私を見て微笑んだ! なんて、よく聞く話だ。
でも、そう信じてみるのも悪くない。
だって、あくまでも想像なのだもの。
それなのに、なぜか騎士団長様は、チラチラと何度もこちらを見ている気がする。
もう一度目が合った気がしたから、手を振ってみたら、エスコートしていない側の大きな手のひらが控えめに揺れた。
「……まさか、気のせいじゃ、ない?」
顔がどんどん熱を帯びてくるのは、強い日差しのせいなのだろうか。
気のせいに、決まっているのに。
姫君をエスコートする騎士団長様が、表情を改め、膝をつく。
国王陛下の姿は、幕に阻まれてもちろん見えない。隣国の姫君が、静かに幕のなかへと入っていく。
王太子殿下と隣国の姫君が、婚約されるという噂は、おそらく本当なのだろう。
高い位置に設けられたボックス席。
そこから降りてきた騎士団長様は、まっすぐに試合の舞台へと上がる。