【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

「姉さん!」

 少し咎めるような、弟の声に我に返り、慌てて宝石をもう一度ポケットに押し込む。

「妖精たちが案内してくれるって」
「……大丈夫なのか?」

 騎士団長様の声は、少しの不信感をはらんでいる。それはそうだろう。私たちは先ほど、妖精の群れに追いかけられたばかりなのだ。

「妖精たちは、子どものように興味を示したものに忠実だ。だけど、会話さえ出来れば言葉が通じないわけでもない」
「そうか……」
「さっき姉さんが投げた宝石の魔力は極上だったから、お礼がしたいって。つまり問題ないよ。……今は」

 今は、という部分に引っかかりを覚えながらも、先導する光とエルディスのあとをついていく。
 それにしても、騎士団長様に二つの宝石を預けた魔女様は、いったいどこまでこの結果を予測していたのだろう。

 不思議な存在、魔女様。
 ときに残酷な、ときに気まぐれなその行動の真意を私たちが読むことなどできないのだろうか。

 私のよりも深い紫色のアメジストのような瞳が、チラチラと脳裏をよぎっていく。
< 260 / 334 >

この作品をシェア

pagetop