【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
妖精が導く場所は、金色の美しい魔力で満たされていた。
緑色の宝石が小さく震えた気がして取り出すと、光が次から次へと吸い込まれていく。
「……オーナーの魔力」
「ああ、間違いない。シルヴァ殿の魔力だな」
「すごい魔力だ。でも、今にも爆発しそうだよ、姉さん」
「……エルディス」
「気休めかもしれないけど」
エルディスが、私の胸元に揺れるネックレスに、魔力を込めた。淡い紫色の光が、魔石に吸い込まれていく。
静かに輝く宝石が物珍しいとでもいうように、妖精が一匹、三人分の魔力が込められたネックレスの触れるか触れないかの距離に近づいて飛んでいった。
「……アーサー様」
「ああ。本来であれば、すでに俺たちは、以前のように子どもの姿になっているに違いない。この宝石のおかげかな」
緑色の宝石は、銀色にそして金色にキラキラ輝きながら、周囲の魔力を吸い込んでいるようだ。
「……こんなにすごいものを受け取るために、アーサー様は、魔女様にどんな対価を」
「静かに」
誤魔化されたような気がしてしまったけれど、それと同時に目の前の光の渦に、ただならぬ気配を感じる。
光に目が慣れてくれば、そこには夜に溶けそうな紺碧の髪と、あまりに美しい金色の瞳をした男性が一人立っていた。
その人外の美貌を持つ男性が、まるでこの世のものではないように妖艶に微笑む。
「……リティリア、会いたかった」
「オーナー!」
「……こんな場所まで来るなんて。最期に君の姿が、見たかった。そんなことを願ってしまったのが、いけなかったかな」
近づけば、微笑んだオーナーが、静かに私から目をそらした。
「ここは危険だ。ヴィランド卿、早く連れて帰ってくれないかな」
まるで、最後のお別れを告げられたように思えて、ズキリと胸が痛む。
「……や、いやです!!」
「リティリア、仕方がないんだ。この魔力は今にも、弾けてしまいそうだから」
ギラギラと眩すぎるほどの光の中で、そこだけ夜が訪れたような髪のオーナーは、今にも儚く消えてしまいそうだ。
どうしていいのか、解決の糸口も浮かばなくて、ボロボロと涙がこぼれ落ちていく。
チラリとこちらに視線を送ったオーナーが、少しだけ傷ついたように眉をひそめた。