【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
二人のやり取りは、まるで信頼し合った仲間のようだ。
少しの間、今の緊迫した事情も忘れて、舞台の一幕のような会話に耳を傾ける。
「それにリティリアを笑わせる役目は、誰にもゆずれない」
「……はあ、仕方ないな」
青みがかった長い前髪をグシャリと乱して、細められる金色の瞳。
その身体には、オーナーを手に入れることを諦めきれない金色の帯が巻き付き、連れ去ろうとしているようだ。
「リティリア、宝石を」
「……アーサー様」
「俺の心配はするな。命のやり取りなど、星の数ほどして、そしてこの場所に未だ立っている。それより、リティリアにがんばってもらわなければならない」
「私に……?」
もしも、私にできることがあるなら、なんだってするだろう。
いつも私を助けてくれる、大切な人たちのためならば。
騎士団長様は、金や銀の光を帯びた宝石をそっと手のひらで包み込んだ。
次の瞬間、宝石は元の騎士団長様の瞳によく似た色を忘れてしまったように、眩い銀色に光り輝く。