【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
「ほら、シルヴァ殿、手を出せ」
「……本気か? どうして、他人のために命をかける」
「他人のためじゃない。リティリアの笑顔のためだ。……それに、存外あの店が気に入ってしまったからな」
その言葉に、金色の瞳を見開いたあと、オーナーはさもおかしいと言うように笑った。
「……ははっ。意外にも可愛いものが好きなのだな」
「当たり前だ。リティリアも、可愛いだろう?」
「違いない」
二人を照らす金と銀の光。
会話の意味がよくわからないけれど、意気投合したらしい二人。
オーナーが、宝石にそっと手を触れれば、騎士団長様が苦しげに低くうめいた。
「……ものすごい魔力だな。さすが、王国の筆頭魔術師」
「……これだけの魔力を受けて、まだしゃべれるなんて、ヴィランド卿こそバケモノか」
「ひどいな。だが、限界か……。リティリア!!」
顔を上げる。先ほどから私のネックレスにご執心で、近くにまとわりついていた一匹の妖精が、騎士団長様の言葉に反応したようだ。
「……お願い。助けて」
その言葉を受けて、ひらひらと飛んでいった妖精が二人の魔力を嬉しそうに吸い取った。
けれど、騎士団長様が力を尽くしても、私が妖精にお願いしても、きっとそれだけでは足りない。
「うわぁ……。この場所が、隔離されていなければ王都が吹き飛びそうだ」
光が収まらないことに絶望しかけたとき、いつも私を助けてくれる大切な人の声がした。
振り返るとそこには、たくさんの妖精に取り囲まれたエルディスの姿があった。