【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 それだけで、会場が静まりかえり、誰ひとり目が離せなくなる。
 騎士団長様の目の前に立つのは、赤みを帯びたくせ毛の、年若い騎士様だ。

 何かを騎士団長様が口にして、獰猛な笑顔を見せた。気を引き締めたように、若い騎士様が剣を構える。

 試合開始の合図、太鼓の音が響いた直後、カァンッと高い音がして、クルクルと剣が青空に舞った。
 ……速すぎて、何も見えなかった。

 若い騎士様が、一礼をして去っていく。
 その表情は、悔しさよりもむしろ憧れが浮かんでいるように見えた。

「本当に、強いのね……」

 この胸の高鳴りは、とてもカッコいいものを見たときの憧れなのだろう。
 だからって、こんなに苦しくなるほど、心臓がドキドキするなんて初めての経験だ。

 そのまま、ぼんやりと陛下からのお褒めの言葉と、姫君から銀色の薔薇を賜る騎士団長様を見つめる。

「…………あれ?」

 隣国の姫君と、国王陛下がいらっしゃるボックス席。そこに続く階段をなぜか駆け降りてきた騎士団長様。

 会場のざわめきなんて、全く耳に入らないように、歩む騎士団長様に、観客が二手に分かれていく。

 ……どんどん近づいてくるのは、気のせいよね?

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