【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
魔女様の前で勢いよく立ち上がり、そしてふらついた私を大きな手が支える。
顔を上げれば、申し訳なさそう、かつどこか気まずそうなオーナーが私を見下ろしていた。
「……オーナー? 何だか雰囲気が」
「……魔力がほとんどないせいだろう。時空魔法を無理に抑えた弊害だそうだ。残念ながら、まともに魔法が使えない」
「命に別状は!!」
「……ない」
喜んで良いものか困惑していると、肩をポンッと叩かれる。
微笑んだオーナーからは、魔力の支配から解放されたからなのか、いつもの妖艶な雰囲気が消え去って、可愛らしさとかっこよさが同居したような爽やかさが感じられる。
「リティリアとエルディス。そして、ヴィランド卿のおかげだな」
「えっと、その。……良かったです!!」
感極まってポロポロと涙を流してしまった私。
オーナーは、まるであやすように頭を撫でた。
「魔法、使えなくなっちゃったんですね……」
「ああ」
「……そうね。シルヴァはもう、王国を守るような魔法は使えないけれど、安心して」
扉が現れる。
空間に突如現れたそれは、とてもよく見知った懐かしい扉だ。
「カフェ・フローラ……」
「ところで、リティリア。あなたのことも助けてあげたのだから、対価をいただくわ」
「……はい。お支払いいたします」
「あら? 内容も聞かないなんて、あいかわらず無鉄砲だわ?」