【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
けれど、もう願いは叶えられてしまったのだ。
私が対価を払わなければ、魔女様も困ってしまうに違いない。
「……まあ、倒れたあなたをあの場所から連れ戻して助けたことだけだもの。たいした対価じゃないわ」
魔女様は、カフェ・フローラの扉のノブをガチャリと回した。
「これから先ずっと、私が注文したときに、カフェ・フローラの日替わりコーヒーとお菓子を届けてちょうだい?」
「えっ、そんな簡単な」
「ふふ。簡単だと思う? 魔女はとても長い時を生きるの。だから、あなたが婚約しても、結婚しても、そしておばあちゃんになっても、私にコーヒーとお菓子を届けるのよ? できるなら、あなたたちの子どもも来てほしいわね」
微笑んだ魔女様は、いつもの少し恐ろしい雰囲気が消えて、どこか母を思い出させる。
「でも、オーナーの魔法が使えないなら、カフェ・フローラは……」
「ふふ。見てご覧なさい」
扉が開けば、新緑の香りとともに出迎えてくれたのは、蝶ネクタイとベストを身につけ二本足で立つ、森のくまさんぬいぐるみだった。