【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
「さて、そろそろ戻らなくては」
「……お仕事ですか?」
「ああ、実はリティリアが心配すぎて抜け出してきた」
騎士団長様は、私に微笑みかけると席を立った。
テーブルには、空いたお皿とカップがひとつずつ。ちゃんと朝ごはんも口にしてくれたようでホッとする。
「……リティリア、しばらく忙しくなりそうだ」
「……どうしてですか?」
「シルヴァ殿不在の穴がな……」
「オーナーの……」
王国の筆頭魔術師であるオーナーは、魔獣が侵攻してこないように結界を維持し、自らも最前線で戦ってきた。
その穴を埋めるのは……。
「……っ、アーサー様」
「リティリアが気に病む必要はない。この職に就いたときから、当然のことだと思っている。ただ」
なぜかたくさんのクマたちが、花がたくさんついている枝を持って歩み寄ってきた。
そこには、いつものクマさんとリボンをつけた女の子クマさんもいる。
枝で隠された私たちは、周りから完全に見えなくなった。
隠れて、いたずらでもするように、唇と唇が合わさる。
閉じていた目をそっと開けると、南の淡いグリーンがかった海の色をした瞳が、私のことを見つめていた。