【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 動揺する私から、外されることのない視線。
 手にしているのは、銀色の薔薇だ。

 気のせいなのだと思っている間に、目の前には騎士団長様がいた。
 優しげに微笑んだ美貌は、見ているだけで倒れてしまいそうなほど甘い。

「……リティリア嬢、会いたかった」

 そんな言葉とともに差し出された、銀色の薔薇。
 思わず手にすれば、それは本物ではなく重い、精巧な白金の細工だった。

「あのっ、これ!!」

 動揺しすぎた私は、絶対に釣り合わないはずの焼き菓子を勢いよく差し出してしまう。

「差し入れ? うれしいな」

 銀の薔薇を賜ったときすら無表情だった騎士団長様が、宝物でももらったように笑った。

 ……きっとこれは、夢に違いないわ。

 それなのに、手にした薔薇は、まるで現実だと私に伝えるみたいに、ズッシリと重かった。

【いいね】
20件

------------------------- 第11部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
差し入れと鬼騎士団長 5

【本文】


「このあと、すぐ戻らなくてはならないんだ。……また、会いに行ってもいいだろうか」
「……はい。美味しいコーヒーを用意して、お待ちしています」

 ここ三日間の、寂しさも、切なさも、口の中で溶ける綿菓子みたいに消えてしまう。

「だが、少し目立ちすぎたようだ」

 その言葉で、周囲から注目を浴びてしまっていたことに初めて気がつく。
 予想以上にたくさんの視線が集まっていて、急に心臓がドキドキしてしまう。
< 28 / 334 >

この作品をシェア

pagetop