【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
動揺する私から、外されることのない視線。
手にしているのは、銀色の薔薇だ。
気のせいなのだと思っている間に、目の前には騎士団長様がいた。
優しげに微笑んだ美貌は、見ているだけで倒れてしまいそうなほど甘い。
「……リティリア嬢、会いたかった」
そんな言葉とともに差し出された、銀色の薔薇。
思わず手にすれば、それは本物ではなく重い、精巧な白金の細工だった。
「あのっ、これ!!」
動揺しすぎた私は、絶対に釣り合わないはずの焼き菓子を勢いよく差し出してしまう。
「差し入れ? うれしいな」
銀の薔薇を賜ったときすら無表情だった騎士団長様が、宝物でももらったように笑った。
……きっとこれは、夢に違いないわ。
それなのに、手にした薔薇は、まるで現実だと私に伝えるみたいに、ズッシリと重かった。
【いいね】
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------------------------- 第11部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
差し入れと鬼騎士団長 5
【本文】
「このあと、すぐ戻らなくてはならないんだ。……また、会いに行ってもいいだろうか」
「……はい。美味しいコーヒーを用意して、お待ちしています」
ここ三日間の、寂しさも、切なさも、口の中で溶ける綿菓子みたいに消えてしまう。
「だが、少し目立ちすぎたようだ」
その言葉で、周囲から注目を浴びてしまっていたことに初めて気がつく。
予想以上にたくさんの視線が集まっていて、急に心臓がドキドキしてしまう。