【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 ポンッと頭頂部に大きな手が乗せられた。
 その手は温かくて、しかもオーナーが幸せそうに笑ったから、私まで幸せな気持ちになる。

「……それに、魔力を預かって貰った対価が足りないらしく、毎日必ずケーキを届ける約束なんだ」
「えっ?」
「……まあ、カフェ・フローラのファンが増えたと思えば、それも喜ばしいことだ」

 それだけ言うと、オーナーは淡いピンク色のクリームにキラキラ苺が惜しげもなく使われたケーキをお皿にのせた。

「ちょっと届けてくる」
「えっと、どこまで?」
「すぐ、そこまで」

 オーナーが心配になって後をつけていくと、バックヤードにある扉が開く。

「……あ、あれ!? 魔女様の家が、カフェ・フローラと繋がっちゃった!」

 扉の向こうに、赤い屋根の小さな家が、チラリと見える。

 カフェ・フローラと魔女様の家がしまったのには、ある深い理由があるのだけれど……。
 今はまだその理由が明かされるときではない。
 振り返ったオーナーは、私に小さく手を振ると扉の向こうへ消えていった。

 
< 281 / 334 >

この作品をシェア

pagetop