【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
「……すまない。ようやくリティリア嬢に会えたから、浮かれてしまったな」
「えっ」
「帰りに何かあったらいけない。護衛をつけよう」
「私なんかに、護衛ですか?」
私に会えて浮かれた? それに護衛?
先ほどの言葉の意味を確認する前に、護衛という言葉が出てきたせいで、驚いて聞きそびれてしまう。
護衛って、騎士様に送ってもらうってことよね?
それは、さすがに申し訳なさすぎる。
振り返り振り返り、去って行った騎士団長様を見送って、帰ろうと歩き出したのもつかの間。
「お待ちください!」
後ろのほうから、朗らかな声がかけられた。
「えっと……?」
「ヴィランド卿に頼まれたのです。ぜひ送らせて下さい!」
……なぜか、最後に騎士団長様と手合わせしていた、若い騎士様が追いかけてきて、断り切れずに送っていただいてしまった。
初対面の騎士様に送っていただくことへの緊張と、今日起こったできごとへの理解が追いつかなくて、騎士様と何を話したのか、さっぱり思い出せない。
アパートの前で、少し落ち着きを取り戻した私は、ようやく若い騎士様ときちんと視線を合わせることができた。
赤みを帯びた茶色の髪は、同じ色の瞳と相まってどこか温かそうだ。
「あの、ここまで送っていただいて、ありがとうございました」
「ご令嬢を護衛することができて、光栄でした」
「そんな、恐縮です」
「……では、失礼いたします」
きっと、お忙しかったに違いない。
走り去っていく騎士様を見送って、部屋に入る。