【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 バックヤードに一人きりになると、決まって考えてしまうのは先日の出来事だ。

 あの後から最近完全に引きこもりになってしまったオーナーは、不調を欠片も見せない。
 お店の2階では、魔方陣を描いたり、魔法薬を作ったりと王国に貢献しているらしいけれど……。
 魔法ひとつで大陸全土を自由に行き来できるオーナー。
 けれど彼は、その大きすぎる魔力に呑み込まれる危険性といつでも隣り合わせで生きている。

(もう魔法なんて使わないでほしい……)

 胸をさいなむ痛みは、私がオーナーのことを心配しているからなのだろう。

(そういえば、どうしてオーナーが魔法を使う度に、店内の装飾品やクマのぬいぐるみが消えるのか聞いてみないと)

 パクリと残りを一口で食べきる。
 甘酸っぱいベリーと合わさった、大陸北端のリーヴァ王国の生ハムとなめらかなチーズの組み合わせは、甘塩っぱくてほのかに酸味があって食べた者を虜にする。
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