【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
美しすぎてまるで非現実的にすら思えるのに、何かを見つけたのか軽く目を見開いたあとに笑った顔はどこか可愛らしくもある。
「リティリアは、本当に可愛くて欲張りだね」
胸ポケットからハンカチを取り出したオーナーが、私の口元をゴシゴシと拭いた。
欲張りすぎてたくさんかけてしまった氷結ベリーのジャムが口元についてしまっていたらしい。
「ありがとうございます……」
「いや。……元気がなかったみたいだけど、何かあった?」
「……それは」
どうしてなのか、オーナーは私に質問されたくないように思えた。
オーナーは、私にとって幼い頃から家族みたいに大切な人だ。
困ったような顔を見たくない。
「えっと、そろそろ休憩が終わるので出ますね?」
「……ああ、よろしく頼むよ」
ティータイムが近づけば、再び混雑してくる店内。王子様のようにマントと冠を身につけたクマのぬいぐるみとともに、私は慌ただしく働き始めたのだった。