【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 私には聞こえないようにささやかれた言葉に、騎士団長様が淡いグリーンの瞳を見開く。

「待ってくれ、それは!」

 そのとき、魔女様が指先につまんでいた氷結ベリーを騎士団長様の口に押し込む。

「質問は認めないわ? 今度は命がけで対価を払うなら別だけれど」
「……っ」

 完全に騎士団長様が眉を寄せてしまったのは、魔女様の言葉のせいだけではないだろう。

 気が付けば私たちは、カフェ・フローラのバックヤードに立っていた。

「あの、お水飲みますか?」
「……そうだな。頂こう」

 ――そう、加熱する前の氷結ベリーは、とっても酸っぱいのだ。
 勢いよく水を飲む騎士団長様。
 私が持つ小さな籠に詰められた氷結ベリーと、騎士団長様が持つ籠に半分ほど残された氷結ベリー。

 青い果実はキラキラと溶けかけた氷のように輝いていた。
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