【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
横目に見れば、大きな鏡には背中を大きく曲げて私に口づけをする騎士団長様と、不格好なまま固まってしまって抱きつくこともできずにいる私が映っている。
離れた唇と、熱い吐息と酩酊感。
まるで、お酒を飲んでしまったみたいにクラクラする。
「……あの、似合いませんか?」
「え……?」
「瞳の色が変わったといっても、ほんの少しですけど」
返事の代わりに、お姫様のように抱き上げられ、そのままベッドに降ろされる。
見上げた騎士団長様は、眉を寄せてほんの少し怒っているように見える。
「どんな姿でも愛している。そして、リティリアがどんな境遇に陥ったとしても、そばを離れない」
「……ふぇ」
頭の横に騎士団長様が肘をついて、頬に口づけが落とされた。
それは、幸せで、温かくて……。
「私も、アーサー様のこと」
その言葉は、急激に訪れた幸せな眠気に遮られてしまう。
テラスに向かう扉が少し開いていたのだろうか。
どこから紛れ込んだのか、一匹の妖精が天井を飛び回り、そして消えていった。