【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
俺は、沈黙したまま青みを帯びたカクテルを ひと息に飲んだ。
喉が焼けるような感覚と甘さと酸味が、口の中を通り過ぎていく。
「……それから、取得中の長期休暇の先はどうするつもりだ?」
「そうですね。……この店の中さえいれば、お役に立てるでしょうが。そろそろ、筆頭魔術師から降りさせていただきたいところです」
「まさか。お前の作る魔法薬とスクロールだけでも、筆頭魔術師としての価値は揺るがないさ。……ところでアーサー・ヴィランドが、急激にまた強くなったのは、お前が関係しているのだろう?」
「ご想像にお任せします」
そこから先は、陛下が持参した秘蔵の酒を北端リーヴァから取り寄せた氷で楽しむ。
「それにしても、魔女様はお元気か?」
「会いに行かれれば良いでしょう」
「王となった日から、俺には個人の持ち物がひとつもない。この命さえも、国のものだ。対価を払えぬ人間に魔女様は会ってはくれないさ」
「素直じゃない」
「事実だ」
「そうですか……」
明日もヴィランド卿が、護衛任務に就くらしい。
ただでさえ、俺が参戦できない中、平和を守る重責を負わせているというのに、人使いの荒い国だ。