【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
「わぁ……」
柱に触ってみれば、石のヒンヤリした感触まで再現されていた。
塗装していない……。ローズピンクの石を使っているのね。
こんな美しい建物が、王国の外に本当に存在するなんて。
「美しいな」
「はい。本当に……」
後ろからかけられた言葉に驚いて振り向く。
そこには、目の下に隈があり、疲労をにじませる騎士団長様がいらっしゃった。
「わ! 申し訳ありません。いらっしゃいませ」
「……ああ」
微笑んだ騎士団長様。
昨日お会いして以来だけれど、やっぱりお疲れのようだ。
試合の後も、お仕事があるみたいだったもの。
――――それにしても、いつも店内の装飾にはしゃいでいるところを見られてしまって、恥ずかしいわ。
「こちらの席にどうぞ」
騎士団長様の指定席は、お店の端、窓のない外からは見えづらい席だ。
石で作られたテーブルと椅子は、お店と一緒でローズピンク色をしている。
「コーヒーと、そうだな? 軽く何か食べたい」
「…………では、サンドイッチなどいかがでしょうか?」
「それを貰おうか」
カフェフローラのサンドイッチには、妖精が蜜を取り出す花が、隠し味として添えられている。
蜜を取り出された後は、ほんの少しピリリと辛い花。
いつもコーヒーだけ飲んで帰る騎士団長様が、食事をするなんて珍しい。
「コーヒーは、いつお持ちしますか?」
「先に貰えるかな。……失礼」
騎士団長様は、やっぱりお疲れみたいで、小さなあくびをかみ殺した。
それを見た私は、急いでコーヒーを淹れて、そっとテーブルに置く。
一口それを飲んで、口元を緩めた騎士団長様は、やっぱり昨日の凜々しくて、カッコいい騎士団長様とは、どこか違う気がするのだった。