【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
「何をしに、いらしたのですか?」
「探していたに決まっているだろう?」
「なぜ……。私たちは、婚約破棄によりすでに赤の他人のはずです」
ギリアム様は、幼い頃からの婚約者だ。
支えていこうと思って、必死に勉強してきた日々。
そこに愛はなかったかもしれないけれど、少なくとも家族としての愛を持って、一緒に生きていけると思っていた。
それなのに、男爵家が没落した時、私の前に現れたギリアム様は、私が友人だと思っていた女性を連れて来て、恋人だと、婚約破棄してほしいと言った。
「仕事中ですので」
「もう一度、婚約してやってもいい」
「……は?」
ローズピンクに埋め尽くされた夢のような空間。
その場所で、どうしてこんな耳障りな言葉を聞かなくてはいけないのだろうか。
「仕事なんてする必要ない。男爵家も持ち直してきたと聞いている。元々あの場所は、地下資源も豊富だからな」
「……仕事中です。それから、二度と私の前に現れないでくださいませんか?」
「生意気な」
「うっ!」
強く手首を掴まれて、鈍い痛みが走る。
けれど、次の瞬間、拘束は解かれて、私は安心できる腕の中にいた。