【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
「王太子ではなく、姫君は見目麗しい騎士に懸想していて、二人は秘密の恋仲であるという噂は、おかげで立ち消えた」
「っ、なるほど!!」
「……ん? 何が、なるほどだ? ……ものすごく濃い、誤解の香りがしたぞ」
昨日見かけた、姫君と騎士団長様の、おとぎ話から抜け出してきたようなお似合いの姿が目に浮かぶ。
それだけで、胸がズキズキすると同時に、納得してしまう。
騎士団長様と、隣国の姫君が秘密の恋仲というのは、きっと真実に違いないわ。
だって、平凡な私よりも、姫君の方が、どう考えてもお似合いだもの。
「――――おい。俺が思うには」
「大丈夫です。お二人を応援します」
「いや…………。しまった。余計なことを言ったようだ」
「――――いえ。勘違いする前で、よかったです」
騎士団長様は、きっと私に、真実を話して協力を依頼するために、帰りに送ると言ったに違いない。
その時、裏口に騎士団長様が来たという知らせが来る。
「本日は補充もお菓子作りもすでに終わっています。それでは、失礼いたします」
「あ、ああ……。ヴィランド卿によろしくな? ……幼い頃からの婚約者からの婚約破棄にトラウマがあるせいで、自分を妙に卑下するリティリアに、姫君の話は余計だったな」
後半になるほど小さくなってしまった言葉は、私には聞こえず、なぜか、気まずそうなオーナーに手を振って、私はズキズキ痛む胸に気がつかないように細心の注意を払いながら、裏口へと向かったのだった。