【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
「……ひ、広い」
馬車は、正門をくぐって停められているけれど、ここからお屋敷まで、ちょっとした散策かな? と思うくらい遠い。
お屋敷まで、薄黄色のレンガで作られた道。
その両脇には、芝生と植えられた、太陽の光を受けて宝石のように光り輝く色とりどりの薔薇。
初夏の日差しに輝く水しぶき。
真ん中の広場にあるのは、大きな噴水……?
「そうか? 領地の屋敷は、もっと広い。そういえば、子どもの頃、よく迷ったな」
ここより広いなんて、想像もつかない。
それにどう考えても、王都の一等地であるこの場所に、こんなに大きなお屋敷なんて、聞いていない。
「これは、陛下から賜った俺個人の屋敷で、本邸ではないから、気負わず過ごしてほしい」
そんな笑顔で言われても、気負います!!
そう思ったけれど、それを口にすることはできず、私は黙って騎士団長様の手を取り、歩き出したのだった。