【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
騎士団長様は、苦笑いしている。
初めのうちは、実は可愛いものが好きなのかな、とか、もしかしてデートの下見かな、とか思っていたのだけれど。
毎日、会うたびに、気になってしまっていた。
ただのお客様だと、言い聞かせなくては、きっと恋に落ちてしまうくらいに。
騎士団長様は、微笑んでいる。
なにか、私も気の利いたことを言わなくては、と焦ってしまう。
「そんなに、頬を染めていると言うことは、完全に相手にされていないわけでもない、のかな?」
「……あの」
脳内に浮かんだのは、差し出された銀の薔薇だ。
頬にそっと触れた、騎士団長様の手は冷たい。
「リティリア嬢のために、あの店に通っていたに決まっている」
「あの」
「好きだから。……嫌なら、押しのけてくれないか」
こちらを見つめて、微笑んだ騎士団長様に、私は言葉を失ったまま、抱きしめられていた。
その力は、簡単に抜け出せるほど弱いのに、私は、押し返すなんて、とてもできなかった。