【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
どうやって帰ってきたのか分からないまま、私は部屋に帰り着いて、机に座った。
何度見ても、今日いらした騎士様は、新聞の一面に載っている騎士団長様と同じ顔をしている。
「……雲の上のお方だったのね。……でも、見たことがあるはずね」
騎士団長様を見たのは、本当に遠くから。
まだ、私の実家、レトリック男爵家を襲った災害の数々。
その時に来てくださった騎士様の中に、現在の騎士団長様もいたのだ。
レトリック男爵家の没落、その上婚約破棄に、友人の裏切り。
あの頃のことは、極力思い出さないようにしていたからなのだろうか、思い出せなかったのは。
「恩人……だったのね」
といっても、もう来ることもないわよね?
その時の私は、そんな風に考えて、新聞を丁寧に折りたたむと、机の引き出しにしまったのだった。