【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
「え?」
「濡れてしまう」
振り返った騎士団長様は、心配そうに眉を寄せてこちらを見つめている。
騎士団長様の手は冷たかったのに、ほどなく離された手は、なぜか熱を持っている。
「あの、この小川は魔法でできているので濡れません。……たしかに、冷たさまで再現されていますけれど」
「えっ! あ、それもそうだな。そんな当たり前のことに気がつかないなんて……。失礼した」
なぜか慌ててしまった様子の騎士団長様は、どこか可愛らしくて、噂で耳にする鬼騎士団長様とは違う人のように思える。
まあ、でもこんな美貌の騎士様を見間違えるはずないけれど……。
「心配して、助けようとしてくださったんですよね。うれしいです。ありがとうございます」
「天使か……」
「え?」
「何でもないから、気にしないでほしい」
不思議な単語が聞こえた気がした。
でも、今日のテーマは天使ではなく、森の精霊だ。
「では、少々お待ちください」
「ああ」
ペコリとお辞儀をして、顔を上げる。
外は寒かったのだろうか。
騎士団長様の耳は、ほんのり赤かった。