【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
「いらっしゃいませ。本日は何になさいますか?」
もう、いつものでよろしいですか? と聞いてもいいのかもしれない。
それくらい、騎士団長様はコーヒーしか頼まない。
「ああ、コーヒーを」
なぜかクマのぬいぐるみを、私の方に差し出しながら、騎士団長様はいつものコーヒーを注文した。
「え、あの……?」
戸惑う私をよそに、大きなクマのぬいぐるみは目の前に差し出されたまま動かない。
騎士団長様は、どこか恥ずかしそうに、私から視線をそらしたままだ。
「あ、そうか。大きすぎますものね? お荷物お預かりしておきますね」
こんなに大きなクマのぬいぐるみを抱えたままでは、くつろぐこともできないだろう。
気が利かない自分を残念に思いながら、くったりとしたクマのぬいぐるみに手を伸ばす。
その瞬間、クマのぬいぐるみが、ピクリと揺れる。
「……あ、いや。これは、付き合いでくじを引いたところ、特賞が当たってしまって。……偶然当たった物で申し訳ないが、昨日の礼として受け取ってもらえないだろうか」
「えっ、昨日……?」
もしかして、昨日の礼って、試作品のクッキーのお礼かしら?
目の前のクマのぬいぐるみをそっと手にする。