【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
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「……おはようございます。騎士団長様」
「おはよう」
黒い騎士服は、時に、お店の中が支配されてしまったのではないかというくらい存在感がある。
頭からかぶっていたフード付きのマントは、雨に濡れてずぶ濡れだ。
「騎士団長様は、早起きなのですね?」
「……そうだな。早朝に起きて、鍛錬をして、この店を訪れる。ここ数日、規則正しく暮らしているな」
「……ここ数日?」
お店には、ほかにお客様はいない。
だって、今日は暴風雨で、外は歩くのも難しいような天気なのだから。
私が、家を出たときは、まだ雨だけで風は吹いていなかった。
オーナーは、今日の天気を考えて、無理に出勤しなくていいと言っていた。
けれど、もしかしたら、騎士団長様が来店されるかもしれないと思って、来てしまった。
「とりあえず、こちらで温まってください」
こんな大雨の日は、お店のテーマは、決まって日だまりの庭園だ。
魔法で作られた日だまりに入ってもらえば、衣服はすぐに乾くから。
店内は、静かだ。時々、小鳥の鳴き声が響いて消えていく。
白いレースのワンピースが、フワフワと魔法で作られた、そよ風に揺れる。
このテーマの日は、制服を汚さないよう、少し気をつかう。
「外の天気が嘘みたいに、穏やかだな」
「はい。でも、あと二、三時間は雨も風も止まないみたいですよ?」
「……そうか。申し訳ないが、店にいてもいいだろうか?」
「もちろんです」
わざわざ、聞いてくるなんて騎士団長様は律儀だ。
それにしても、こんな天気なのに仕事に行く途中だったのだろうか。