【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 ……そんな緊張なんて、想像できません。
 大きな竜に挑む騎士団長様。
 おとぎ話の一幕みたいだけれど、まさか本当の話だったなんて。ご無事でよかった。

 まだまだ、スピードを上げる心臓に握った手を当てる。

「はっきり言わなければ、伝わらないとわかった。……リティリア嬢が、好きだから、会いたくて通い続けていた。できるなら俺の恋人に、そして婚約者になってほしい」
「……騎士団長様、私は」

 没落してしまったレトリック男爵家では、ヴィランド伯爵家と家格が釣り合わない。
 騎士団長様の、婚約者なんて、平凡な私には釣り合わない。

「難しく考えているのではないか?」
「……騎士団長様?」

 頭に手を置かれ、そっと撫でられた。
 恋人になりたいと言っているのに、子ども扱いされている気がする。
 でも、頭を撫でられて、こんなに心地よくて、安心するなんて、知らなかった。

「俺のことを、好きか、そうではないか、それだけを答えてほしい」
「…………」
「嫌われていないとは、思っているのだが」
「…………」
「リティリア嬢?」

 優しく促される。
 答えは、もう決まっている。

「好き、です」

 目の前にいる人が好きだ。
 何度も守ってくれたことも、姿形も、厳しい表情も、その優しさも、嫌いなところなんてない。

「そうか」
「でも……」
「その言葉しかいらない。リティリア嬢が、頭を悩ませるようなことは、すべて解決してみせる」

 そう言って、笑った騎士団長様の表情は、試合の前、見たときのように、少しだけ獰猛だと思った。
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