【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
そんな私の考えなんて、たぶんお見通しだったのだろう。
視線を感じて顔を上げると、淡いグリーンの瞳が、思っていたよりもずっと近くにあった。
「……リティリア嬢」
「騎士団長様?」
予想外に聞こえたのは、軽いため息だった。
「君が抱えている問題が、どれほど大きくても、問題ない。今の俺よりも危険な立ち位置にいる人間は、国王陛下くらいに違いない」
……その言葉の意味が、すぐにはわからなくて、でも遅れてきた理解に私は息苦しさを覚えた。
そう、いつも優しく微笑んで、余裕のある表情だから、つい忘れてしまいそうになるけれど、目の前にいる人は。
……有事の際にはいつも一番前で戦い、そして王国の中枢にいるお方なのだ。
「誰も愛することはないと……。いつ死ぬかもわからない場所に立つ俺の人生に、誰も巻き込みはしないと決めていたし、できると思っていた」
私の肩に、トンッと背中を丸めた騎士団長様が、額を当てる。
「王都で、もう一度君の姿を見るまで」