【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
微笑んだまま、騎士団長様は私に手を差し伸べた。
その手にそっと小さな手を重ねる。
「……そろそろ、食事にしようか」
「――――もう、そんな時間ですか。それでは、ご迷惑にならないように、そろそろお暇しますね?」
「……なぜそうなる。リティリア嬢を歓迎するために、食事の用意をしたに決まっているだろう」
「え?」
「いつも、ごちそうになってばかりだからな」
自分が払ったお金で、カフェでコーヒーを飲んでいるだけですし、結局サンドイッチだって自分で払ってしまった。
ほんの少しつけたお菓子も、お礼だから、残念なことに、私は一回も騎士団長様にごちそうなんてしていないのだけれど……?
「えっと……」
「難しいことを考えるな。……そうだな? 君と一緒に食事がしたい。いつも俺ばかり食べているからな」
「あ、その……」
「……ダメだろうか?」
……ダメなはずないです。
首をかしげて、ほんの少し不安そうにも見える表情の騎士団長様。
さすがに、そんなかわいらしい表情を前にして断ることなんてできない。
「あの、では、お言葉に甘えてご一緒させていただきます」
伯爵家の晩餐に招待された、完全に普段着の私。
実は、私は庶民が着ているようなワンピースしか持っていない。
領地に帰れば、どうしても貴族として参加が義務づけられるパーティーのため、一着は残してあるけれど、ほかはすべて領地の復興の足しにするため、売ってしまったのだ。
チラリと、自分のワンピースを見つめた私の視線に気がついてしまったのだろう。
騎士団長様は、そっと私の頭を撫でた。