【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
 予想していたよりもずっと、フワフワとした極上の手触りのぬいぐるみだ。

「本当に、よいのですか?」
「……騎士団に持って行ったら、周囲に冷やかされてしまうだろう。貰ってもらえると助かる」

 ――――それなら、このお店に来ていることだって、冷やかされてしまうのでは……。

 もちろん、そんなこと言えないまま、今日も私はコーヒーと、試作品のクッキーを騎士団長様にそっと差し出したのだった。
 今日も、騎士団長様は、クッキーを一口で食べ、次のクッキーに長い指を伸ばした。
 日に焼けていて、ゴツゴツしていて、いかにも剣を握る人の手という印象を受ける。

「……昨日とは、味が違うのだな」

 それだけいうと、騎士団長様はぱくりと、もう一枚も口にした。

「えっ、よくおわかりになりましたね!?」
「ん? 昨日のクッキーには、バニラのような甘い香りがついていたが、こちらは少しばかりスパイスが効いているようだ。クローブとカルダモンか?」

 今日のクッキーは、昨日のレシピに、ほんの少しだけスパイスを足した。
 たしかに、よく味わえば、スパイスが効いているというのは、わかると思うけれど、スパイスの種類まで当てるなんてさすがだわ!

「それで、あの、いかがでしたか?」
「うん、俺はどちらかといえば、こちらの味が好きだな」
「っ……そうですか!!」

 うれしくなってしまって、素直に笑いすぎてしまったせいかもしれない。
 騎士団長様が、軽く目を見開いた。
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