【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
騎士団長様のおもてなし
「すまない……。予想以上に大事になっていたな。この屋敷に人を招くのが、初めてなんだ」
「……光栄です」
屋敷に人を招くことがない。そうね、個人のお宅でほとんど帰ってもいないと言っていたものね。
改めて浮かぶのは、人の気配はなくても、掃除が行き届いたお屋敷の中。整えられたお庭。
まちがいない。使用人の皆さまは、ずっとお客様をもてなしたかったに違いないわ。
「……なおさら、私なんかで申し訳ない」
こんな、いかにも庶民的な格好をした女性が訪れて、皆さま残念に思っているのではないかしら?
「そろそろ顔を上げるように」
その言葉にあわせて、使用人たちが一斉に顔を上げる。
その動きは、一寸の乱れもなくて、思わず感心してしまう。
「――――このたびは、お招きいただき、このような歓迎まで……。ありがとうございます」
久しくすることがなかった貴族令嬢としてのお辞儀。
スカートは、裾の短いワンピースだけれど、少しだけ持ち上げてみる。
男爵家のお父様と大恋愛の末結婚したお母様は、伯爵家の三女で、礼儀作法にはとても厳しかった。