【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
疎まれ隊長と少女 アーサーside
俺は、伯爵家の長男、しかし本妻の子どもではなく、政略結婚をする前、侯爵の恋人だった女性との間に生まれた。
「アーサー殿、これはあんまりです」
周囲を見渡しながらつぶやいたのは、当時隊長だった俺とともに副隊長を務めていた、現在の副団長シードだった。
士官学校からの付き合いだったシードは、なぜが命の危険が高く、実入りも少ないこの場所についてきてくれていた。
伯爵家でも、居場所はなく、実母が亡くなったとき、引き取られた俺は冷遇されていた。
3年前、レトリック男爵領への赴任が決まったのも、俺を疎んだ義母の計らいによるものだった。
「ついてきてくれて、感謝している」
隊長の肩書きは、伯爵家の人間だからと、周囲からやっかみを受け、それを払拭しようと戦いに明け暮れれば、鬼と呼ばれる日々。
レトリック男爵領は、何年も続いた天災だけでなく、流行病、そして飢饉。
そして計られたかのように、領地を襲った魔獣の大群。
抗うこともできず、没落を待つだけの領地に行きたいものなど誰もいなかった。