【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 ***

「リティリア嬢……。もし、あの時知っていたなら、君をなんとしても助けたのに」

 …………そこまで話した騎士団長様は、話を区切った。弟さんが亡くなって、急に伯爵家の後継者になり、それでもずっと最前線で騎士団長様が戦い続けていたこと、私は知っている。

 ……それよりも。

 無意識に動いた私の体は、騎士団長様を抱きしめていた。
 もうすっかり、真っ暗になってしまったバルコニーに、ふたりきり。

 苦しかった3年前。

 時々その姿を見た、素敵な騎士様が、私のことを見ていてくれたなんて、信じられない。

 でも、その時、きっと苦しんでいた騎士団長様に、もし寄り添えたなら。

「大丈夫です。私、今とっても幸せです」
「そうか……。そうだな、俺がいなくても、この目に映る君は、いつも笑顔だった」
< 97 / 334 >

この作品をシェア

pagetop