【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
騎士団長様は、こんなに素敵で、優しくて、強くて、地位も名誉も何もかも持っているのに、自信がない。
「…………レトリック男爵領に、支援してくれていたそうですね」
「……それは、地下資源が豊富なレトリック男爵領に、投資する意義を」
「……ありがとうございます」
その言葉は、ひとつの事実で、それでいて本質を隠しているような気がした。
「そんなことに恩を感じてもらいたくない」
大事な故郷を助けてもらって、恩を感じないはずもないし、なんとか返したい。
「もし、私のことを思ってしてくれたことなら、とてもうれしいのですが。勘違いでしょうか」
なぜか落ちてくるのは、観念したような長いため息だ。
「……そう、認めるべきだな。結局のところ、君を手に入れたくて俺は」
でもきっと、そんなことを抜きにして、騎士団長様は助けてくれたに違いない。
3年前から行われていたヴィランド伯爵家からレトリック男爵領への融資も、あくまで対等な関係で申し出があったという。
おかげで、王家からの支援が得られなかった領地は、なんとか持ちこたえることができたのだと、私と騎士団長様の噂を耳にした弟からの手紙に書いてあった。
「騎士団長様は、嘘つきです。でも、もしそうだったら、うれしいです」
「リティリア嬢には、敵わないな」
そう言って、抱きしめ返してきた腕が、なぜか不器用に思えて、抱きしめ返しながら、とても可愛らしく思えてしまった。