俺と、悪いことしちゃおっか?
「……別に、ご褒美目当てとかじゃないから」
そう自分に言い聞かせ、私はそれからも学校がある日は毎日、昼休みになると保健室へと通った。
女の子を取っかえ引っ変えすることで有名な須藤先輩に、自分が高校を卒業するまで目覚まし時計を続けて欲しいと言われて、本当は嬉しかったんだ。
「須藤先輩! 起きてください」
「あっ咲奈ちゃん。おはよ。今日も可愛いね」
須藤先輩が、ウインクする。
「毎日こんな可愛い子に起こしてもらえて、俺ってほんと幸せだなぁ」
須藤先輩ってば、まーた人のことを可愛いとか幸せとか、軽々しく言っちゃって……。
私は、ため息をつく。
最近、須藤先輩は目を覚ますと、必ず私に『今日も可愛いね』と言ってくれる。
異性に可愛いと言ってもらえたら、普通は素直に喜ぶべきものなのかな?
だけど……そんな言葉、今まで両親や祖父母以外に言われたことがなかったから。
何だか変な感じ。身体がムズムズする。
「須藤先輩。私に可愛いとかそんなお世辞言っても、何も出ませんよ?」
「えっ? 俺、お世辞なんて言ってないけど?」
私は先輩に、頬を両手で挟まれる。